「好きな人の前で、なぜか自分が出せない」
男女それぞれの”言い分”を、包み隠さずぶつけ合う対談形式でお届けする。
登場人物はこの二人。
タクヤ(28歳・男性) 営業マン。付き合う前は相手に全部合わせてしまうタイプで、3回フラれた過去あり。最近「もしかして俺、自分なさすぎ?」と気づき始めた。
ミナ(27歳・女性) フリーランスデザイナー。「なんでもいい」が口癖で、好きな人の前ではとにかく波風を立てたくない。でも最終的に「つまらない」と言われた経験が何度かある。
第一ラウンド ─「なんでもいい」は優しさか、逃げか
ミナ: 正直言って、私の「なんでもいい」は優しさなんですよ。相手に選ばせてあげてるんだから。リードしたい男性にとって、むしろありがたいでしょ?
タクヤ: …それ、男目線から言わせてもらっていい?
全っっ然ありがたくないです(笑)。
「どこ行きたい?」「なんでもいい」「何食べたい?」「なんでもいい」ってなると、俺が全部決めなきゃいけないプレッシャーがすごくて。デート前から消耗するんだよね。
ミナ: えっ、そうなの? 男ってリードしたいんじゃないの?
タクヤ: リードしたいのと、全責任負いたいのは別!
仮にお店を選んで、料理が口に合わなかったとしたら、それって俺のせいになるじゃないですか。でも相手が「ここがいい」って言ってくれてたら、お互いで選んだことになる。責任の分散ってやつよ。
ミナ: ちょっと待って。責任の分散って…恋愛にそんなビジネス用語持ち込む?(笑)
タクヤ: いや笑えないんだよこれが。マジで。
付き合う前の食事って、俺たちにとってほぼ”面接”みたいなもんで。全部俺が決めて、万が一外したときのダメージがデカすぎる。だから「あなたはどうしたい?」って聞いてるのに「なんでもいい」って返ってくると、ガクッてなるんだよ。
第二ラウンド ─ なぜ「なんでもいい」が口から出てしまうのか
ミナ: じゃあ逆に聞くけど、なんで女が「なんでもいい」って言うか、わかる?
タクヤ: …嫌われたくないから、じゃないの?
ミナ: 半分正解。でも、もっと根っこの話をするとね。
昔、好きな男の子に「ここのお店どう?」って提案したことがあって。そしたら「え〜、俺あんまり好きじゃないんだよね」って言われた瞬間、胸のあたりがきゅってなって、次から何も言えなくなったんだよね。
(あ、私の意見って、邪魔なんだ)
そう思ってから、「なんでもいい」が出るようになった。自分を守るための言葉なの、これ。
タクヤ: …それは、ちょっとわかった。
俺も似たような経験あって。昔、女の子に「タクヤってほんと意見ないよね」って言われたことがあって。そっから逆に「意見言いすぎないようにしよう」ってなった時期があるんだよ。
ミナ: ほら!男も同じじゃん!
タクヤ: いや、でもそこで俺が選んだのは「意見を言わない」じゃなくて「意見の出し方を変える」だった。
「こういうのどう思う?」って聞く形にしたら、相手も乗りやすくなったんだよね。意見があっても、押しつけにならないように包んで出す。そのスキルを磨いた。
ミナ: …それ、ちょっとずるくない?(笑)
タクヤ: ずるいって言うなよ! 戦略だよ戦略!
第三ラウンド ─「なんでもいい」が続くと何が起きるか
ここが一番大事な話。
ミナ: 正直言って、「なんでもいい」を続けた結果、自分が何が好きかわからなくなった時期がある。
付き合ってた彼氏に「ミナって何が好きなの?」って聞かれたとき、ぱっと答えが出なかった。
シーンとした沈黙が部屋に広がって、彼がちょっと困ったような顔をして。あの感じ、今でも覚えてる。
(私って、何も持ってない人間みたいじゃん)
そう思ったとき、ぞわっとした。
タクヤ: それ、すごく正直に言ってくれてありがとう。
俺も似たパターンで、付き合う前に全部相手に合わせ続けた結果、「タクヤといると疲れる」って言われたことがある。
俺が全力で合わせてるのに、なんで疲れるんだ?って最初はぽかんとしてた。
でも後から気づいたのは、相手が「正解を探し続ける疲れ」を感じてたってこと。俺が意見を出さないから、相手がずっと「これでいいのかな?」って確認し続けてたんだよ。
ミナ: …あ、それわかる。意見がない人って、相手を安心させてくれないんだよね。
タクヤ: そう! それ!
「なんでもいい」って、一見やさしいけど、実は相手に「私のこと好き?本当に?」って思わせ続けてる。
第四ラウンド ─「なんでもいい」の背後にある自己肯定感の話
ミナ: ちょっと真面目な話していい?
私が「なんでもいい」を言い続けてた本当の理由って、結局「私の意見なんてたいした価値ない」と思ってたからなの。
子どものころ、親に「どうせあなたの好みは変だから」って言われたことがあって。それがずっと頭にある。
タクヤ: …それは、俺が想像してた話より、ずっと根が深いな。
ミナ: でしょ? 「なんでもいい」って言葉の裏に、そういう歴史がある人って結構いると思う。だから男性側に「ちゃんと意見言えよ」って言われると、それだけで傷つくこともある。
タクヤ: それは…確かにそうだ。俺、無神経だったかも。
でも、男側の視点で言うと、好きな人には「あなたのことを知りたい」って思ってるんだよ。意見を出してほしいのは、責めたいんじゃなくて、純粋に”あなたを知りたい”から。
ミナ: それ、言葉にして言ってくれないとわからないよ!
タクヤ: …そっか。俺も、ちゃんと言えてなかったな。
(これ、お互いに言えてないことがあっただけじゃないか)
第五ラウンド ─ じゃあどうすればよかったのか、本音で話す
タクヤ: 俺が思う「理想の答え方」って、完璧な提案じゃなくていい。
「最近なんかはまってるもの?私はわりとなんでも食べるけど、強いて言うなら…」みたいな、フワッとした自己開示で十分なんだよ。
ゼロか百かじゃなくて、三十でいい。
ミナ: それ、すごくハードル低くて助かる。
でも逆に、男性側にも言いたいことがあって。
「なんでもいい」って言ってる女性に対して、「ちゃんと意見言ってよ」ってプレッシャーをかけるのも、実は逆効果なの。
追い詰められると、ますます言えなくなる。
タクヤ: じゃあどうしろっていうの?
ミナ: 「和食と洋食、どっちがテンション上がる?」みたいに、二択で聞いてくれると答えやすい。
選択肢を絞ってくれると、急に意見が出てくる女性って多いと思う。
タクヤ: …それ、俺がやってなかったやつだ(笑)
聞き方が雑だったんだな、俺。
第六ラウンド ─ 好きな人の前で「自分らしさ」を出す練習
ミナ: 正直、自己肯定感って一朝一夕には上がらないじゃないですか。
だから私が実際やってみたのは、「ひとつだけ言う」練習。
好きな人との会話で、全部合わせなくていい。ひとつだけ、本当のことを言う。「このお店のデザート、めちゃくちゃ好きなんだよね」とか、それくらいの小さいことでいい。
それだけで、なんか自分を取り戻せる感じがする。
タクヤ: それいいな。
俺がやったのは、「苦手なものを先に言う」こと。
「辛いものだけ苦手で、それ以外は本当に何でも!」って言うと、相手も動きやすいし、俺も一個本音が言えた気になれる。
ミナ: ちょっと待って、タクヤってそんな繊細だったの?(笑)
タクヤ: 繊細って言うな! これは戦略的自己開示だ!
ミナ: (笑)
第七ラウンド ─ 最終対決。結局どっちが正しいのか
ミナ: ぶっちゃけ言うと、「なんでもいい」は悪くない。状況による。
初めてのデートで「なんでもいい」なのか、付き合って3年の彼氏に「なんでもいい」なのかじゃ、全然違う。
タクヤ: いや、俺は付き合う前こそ「なんでもいい」はNGだと思う。
付き合う前って、お互いのことを探り合ってる段階じゃないですか。その時期に「なんでもいい」が続くと、「この人のことが何もわからない」ってなって、そのまま関係が止まる。
ミナ: でも、無理して意見を言って、引かれる可能性もある。
タクヤ: それは「意見の出し方」の問題であって、意見を言わない言い訳にはならない。
ミナ: …むっ。反論できない(笑)
客観的な結論 ─ どちらが正しかったのか
この対談を通じて見えてきたのは、「なんでもいい」問題は、表面上は”食事の返答”の話だけど、その根っこにあるのは自己肯定感と自己開示の問題だということ。
男性側の主張をまとめると「意見がない相手は、関係を深めるきっかけが作れない。だから意見を言ってほしい」。
女性側の主張をまとめると「意見を否定されてきた経験があるから怖い。安心できる聞き方をしてくれれば言える」。
どちらも間違っていない。
ただ、客観的に見て、一歩踏み出す責任は双方にある。
女性側は「聞き方が悪い」と待ち続けるより、小さな自己開示を一つだけ試みること。
男性側は「なんでもいいはNG」と断じる前に、答えやすい聞き方を工夫すること。
どちらかが変わるのを待っていたら、関係はそのまま止まる。
「なんでもいい」と言ってしまう自分に気づいたとき、それはチャンスだ。
(あ、俺/私、また逃げようとしてる)
そう気づける人は、次の一歩が踏み出せる。
おわりに ─「なんでもいい」があなたを守っている、その先へ
「なんでもいい」は、優しさでもなく、逃げでもなく、自分を守るための鎧だった。
でも鎧を着たまま誰かに近づこうとしても、触れ合えないよね。
好きな人の前で、鎧を全部脱ぐ必要はない。ちょっとだけ、隙間を作るだけでいい。
「強いて言うなら、〇〇が好きかな」
その一言が、あなたを知ってもらうための最初のドアになる。
タクヤもミナも、まだ練習中。あなたも、ゆっくりでいい。
この記事が「自分のことだ」と思ったあなたへ。
次のデートで、一個だけ本音を言ってみて。それだけでいい。
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