「ねえ、聞いてよ。元カレにご飯誘おうと思ってるんだけど」
休日の昼下がり、私は行きつけのカフェで幼馴染の直樹にそう切り出した。三ヶ月前に別れた彼のことが、どうしても忘れられないのだ。
「復縁狙い?」直樹はカフェラテを一口飲んで、真剣な顔になった。
「うん……ダメかな」
「ダメじゃないけど、男目線で正直に言わせてもらうと、元カノから食事に誘われるのって、結構複雑な気持ちになるんだよ」
「複雑って?」
「嬉しい気持ちもあるけど、警戒心もあるっていうか。『何が目的なんだろう』『また同じことの繰り返しになるんじゃないか』って考えちゃうんだ」
私は少し落ち込んだ。やっぱり迷惑なのかもしれない。
「でもさ、会わないと何も始まらないじゃん。このまま連絡もしないで終わるのは嫌なの」
「それは分かるよ。ただ、誘い方とタイミングを間違えると、逆効果になるってことも知っておいた方がいい」
直樹は真剣な目で私を見た。
「例えばさ、別れてすぐに『会いたい』って連絡してくる元カノって、正直重いんだよ。男はまだ気持ちの整理がついてないことが多いから、『ちょっと待ってくれ』って思う」
「じゃあ、いつなら大丈夫なの?」
「最低でも一ヶ月、できれば二ヶ月は空けた方がいい。その間に、お互い冷静になれるから。別れた直後って感情的になってるから、会っても喧嘩になりやすいんだよ」
私は考え込んだ。彼と別れてから三ヶ月。タイミングとしては悪くないのかもしれない。
「でもね、直樹。女からすると、待つのってすごく辛いの。『待ってる間に他の女に取られたらどうしよう』『忘れられたらどうしよう』って、毎日不安で仕方ないんだよ」
「それは分かるけど、焦って行動しても良い結果にはならないよ。俺の友達でさ、別れて一週間で元カノに『やり直したい』って言われた奴がいるんだけど、正直引いてたもん」
「引いた?」
「うん。『まだそんな気持ちになれない』って。結局その子とは復縁しなかった。もう少し時間を置いてたら、結果は違ったかもしれないのにね」
私は深くため息をついた。
「じゃあ、誘い方はどうすればいいの?ストレートに『会いたい』って言っちゃダメ?」
「ダメじゃないけど、重く感じられる可能性はある。男からすると、『会いたい』って言われると、『復縁を迫られるのかな』って身構えちゃうんだよ。だから、もっと軽い感じがいいと思う」
「軽い感じって?」
「例えば、『新しくできたお店に行ってみたいんだけど、一緒にどう?』とか。目的があると、男も『まあ、ご飯くらいならいいか』って思いやすい」
「なるほど……でもそれって、ちょっとずるくない?本当の目的を隠してるみたいで」
直樹は首を振った。
「ずるいとは思わないよ。最初から『復縁したい』って言われたら、男はプレッシャーを感じるんだ。でも、『友達としてご飯行こう』って言われたら、気楽に会える。会ってみて『やっぱりいいな』って思えば、そこから関係が進展することもあるし」
「男の人って、そういう段階を踏みたいの?」
「踏みたいっていうか、いきなり復縁の話をされると逃げたくなるんだよ。一度別れた相手と会うこと自体、男にとってはハードルが高いから。そのハードルを下げてくれると、会いやすくなる」
私は少し希望が見えた気がした。
「でもね、直樹。女からすると、『友達として』って誘うのって、プライドが傷つくの。本当は『好き』って言いたいのに、それを隠して会わなきゃいけないのは辛い」
「プライドか……」
「そう。『私から誘ってるのに、友達扱いされるのかな』『軽く見られてるのかな』って思っちゃう。女だって、本当は堂々と気持ちを伝えたいんだよ」
直樹は少し考えてから言った。
「それは分かるよ。でもさ、最初の一歩は『会うこと』なんだ。会えなかったら、何も始まらない。プライドを守って会えないより、プライドを少し抑えて会える方が、結果的には良いと思わない?」
「うーん……」
「それに、男だって『元カノに誘われた=まだ好かれてる』って分かってるよ。表面上は『友達として』でも、内心では気づいてる。だから、そんなに心配しなくていいと思う」
私は少しホッとした。
「ねえ、他に気をつけることってある?」
「時間帯かな。最初から夜のディナーに誘うと、重く感じられることがある。ランチとか、カフェでお茶とか、短時間で終わる約束の方がいい」
「なんで?」
「男からすると、夜の食事って『長時間拘束される』って感覚があるんだよ。まだ気持ちが固まってない段階で、二時間も三時間も一緒にいるのは、正直しんどいって思う奴もいる。ランチなら一時間くらいで終わるから、気楽に会える」
「そっか……女からすると、夜の方がムードがあっていいと思っちゃうんだけどね」
「それは復縁が見えてきてからでいいんじゃない?最初はハードルを下げることが大事だよ」
私はスマホを取り出して、彼とのLINEを見た。最後のやり取りから三ヶ月。既読がついたまま、返信は来ていない。
「ねえ、直樹。もう一つ聞いていい?会えたとして、何を話せばいいの?」
「過去の話は避けた方がいい。特に、別れた原因とか、喧嘩のこととか。せっかく会えたのに、嫌なことを思い出させたら意味ないから」
「じゃあ、何を話せばいいの?」
「普通に近況報告でいいんじゃない?仕事のこととか、最近ハマってることとか。楽しい話をして、『やっぱり一緒にいると楽しいな』って思わせることが大事」
「でも、女からすると、近況報告だけじゃ物足りないの。『私のこと、まだ好き?』『やり直せる可能性ある?』って、確認したくなっちゃうんだよ」
「それは分かるけど、最初の食事で確認しようとしない方がいい。焦ると失敗するから」
直樹は真剣な目で私を見た。
「復縁って、一回の食事で決まるものじゃないんだよ。何回か会って、お互いの気持ちが戻ってきて、それで初めて『やり直そう』ってなる。最初から結果を求めると、相手にプレッシャーを与えちゃう」
「プレッシャー……」
「そう。男って、追い詰められると逃げたくなるんだ。だから、余裕を持って接することが大事。『また会いたいな』って思わせて、次に繋げる。それを繰り返していくうちに、自然と復縁に近づいていくんだと思う」
私は深呼吸した。焦る気持ちを抑えるのは難しいけど、直樹の言うことにも一理ある。
「ありがとう、直樹。なんか、少し整理できた気がする」
「頑張れよ。でも、無理はするなよ。復縁がうまくいかなくても、それはそれで新しい出会いがあるかもしれないから」
「うん……でも、まずはやってみる。後悔したくないから」
私はスマホを手に取った。彼に送るメッセージを考える。「新しくできたイタリアン、一緒に行かない?」軽い感じで、でも気持ちを込めて。
結論として、元彼を食事に誘う際の「正しい方法」について言えば、男性側の「軽い誘い方で、段階を踏んで距離を縮める」という主張と、女性側の「本当の気持ちを伝えたい」という主張、どちらにも正当性がある。ただ、復縁という目的を達成するためには、男性側の意見に一票を入れたい。一度別れた関係を修復するには、相手に安心感を与えることが何より重要だ。最初から復縁を匂わせると、男性は身構えてしまう。まずは「友達として会う」というハードルの低い一歩から始め、会話を重ねる中で信頼を取り戻していく方が、結果的に復縁の可能性は高まるだろう。大切なのは、焦らないこと。そして、たとえ復縁できなくても、「自分は精一杯やった」と思える行動をすることだ。
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